ピエロ
東郷青児
1925(大正14)年に移り住んだモンマルトルで、東郷は30歳を目前に納得のいく画風を作り上げつつありました。サーカスでおなじみの「ピエロ」は、もとはイタリアの伝統的な喜劇である「コメディア・デッラルテ」の登場人物です。当時のパリで人気を博したバレエ・リュスを率いていたディアギレフも、イタリア旅行で魅了されたこの古典的な演目を上演していました。本作の重厚かつ整理された構成は、東郷が政治色を強めていった未来派から離れ、近代的な合理性と伝統的な古典主義をいかに融合させるか模索していた当時のパリの文化に共感したことをうかがわせます。
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