黒い手袋
東郷青児
本作を描く二年前に、東郷は下北沢に白いル・コルビュジエ風の邸宅を建て、宇野千代と一緒に暮らし始めていました。その建築費用を捻出するために、名士とその夫人たちの肖像画を手がけ、さらには花や女性をモティーフにした頒布用の小品を数多く描くようになります。時をおなじくして、宣伝デザインや挿絵の注文も次々と舞いこむように。二科展に出品した本作は、東京火災(現・損保ジャパン)の保険案内のパンフレットに使われました。大衆の目にふれる多彩な仕事を手がけるうちに、当代きってのモダンボーイという評判がひろまったのです。
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