『静物(ゆりの花)』
東郷青児
花や机などの各要素を幾何学的に単純化した装飾的な花卉画である。黒と藍色から白までのモノトーンは、1930年代の東郷の作品やデザインの基調になった。パリから帰国した昭和戦前期、東郷は(数は少ないながらも)頒布会や個展のために花の絵を描いた。「S14.6」(1939年6月)とメモ書きのある日本橋三越の個展評の切り抜き記事では、全28点の出品作に1点だけ花の絵があるとして、やはり白百合の作品図版が添えられている。「李朝の壺に刺された白百合の姿は東郷氏描く美人の精が凝つたやうで素晴らしい芸術的香気を放つてゐる」(「東郷青児画伯近作展」より抜粋)。白百合の花言葉は「純潔」「威厳」「甘美」等であり、西洋では聖母のシンボルとされた。
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