梅
東郷青児
白梅の前にたたずむ和装の女性を描いたリトグラフ。東郷の油彩の女性像は瞳がごく淡い色で塗られ、見えないことも多い。しかし、素描や雑誌の表紙などの写実味が求められる媒体では明確に描かれてきた。1960年代から油彩画にも線や筆跡を活かした画風が増えるにつれ、本作品のように虹彩と瞳孔の区別や、写り込んだ光まで描写した大きな瞳が描かれるようになった。本作は1975年10月から日本橋の三越が開催した「東郷青児油絵展」で展示された。東郷のアルバムにある会場写真では、入口に設置されたテーブルの上に、芳名録やパンフレット、カタログと一緒に(おそらくは販売用の見本として)このリトグラフが一枚置かれている様子が見てとれる。