3月23日(土)より開催中の「北欧の神秘―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」展に関連し、3月26日(火)に記念シンポジウムを開催いたしました。
スサンナ・ペッテルソン氏(フィンランド文化財団理事長)、パール・ヘードストゥルム氏(スウェーデン国立美術館展覧会部門ディレクター)、ヴィーベケ・ヴォラン・ハンセン氏(ノルウェー国立美術館主任学芸員)、アンナ=マリア・フォン・ボンスドルフ氏(フィンランド国立アテネウム美術館館長)をお迎えし、北欧の美術について講演とパネル・ディスカッションをしていただきました。
本展の中心にあるテーマは、19世紀末に北欧の芸術家たちがどのようにして自国の文化へ関心を示し、北欧独自の芸術を生み出していったか、というものです。
すべてのパネリストの意見として共通していたのは、北欧各国の地理的な近さ、それに伴う気候についての分析です。雄大な自然、厳しい寒さといった環境が、当時のロマン主義的な絵画の動向と組み合わさり、独自の表現を見出していったとのこと。
また、北欧の芸術家たちの多くがドイツやフランスなどへ留学、当時の美術に影響を受けながら、帰国して後進を育てていった重要性も強調しています。ムンクも、そのひとりでした。
また、言語が似ていること、北欧神話への着目などが、北欧独自の芸術を生み出していったといいます。フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」に登場する大気の乙女を描いたロベルト・ヴィルヘルム・エークマン《イルマタル》(1860年、フィンランド国立アテネウム美術館)、「カレワラ」を吟じる女性を描いたアルベルト・エーデルフェルト《ラリン・パラスケの哀歌》(1893年、フィンランド国立アテネウム美術館)などは、本展の見どころになっています。
北欧の美術が世界各地で再評価されていることをめぐって、ヘードストゥルム氏は、新しいものを見つけて紹介したいという衝動が背景にあると話します。例えば、本展出品作家ではありませんが、スウェーデンの女性画家ヒルマ・アフ・クリントは数年前までほとんど名が知られていなかったものの、ニューヨークのグッゲンハイム美術館での個展(2018~19年)では、同館で過去最多の入場者数を記録しています。
最後に、会場の質疑応答の中で、女性の画家に関する質問がありました、ヴォラン・ハンセン氏によれば、1870年代以降、多くの女性が芸術家を志し、国内外で美術アカデミーに通うことなどができたといいます。しかし、家族、子どもがいると、アーティストとしてのキャリアが続けにくく、アーティストとして成功することの難しさについても話されていました。
このようにご参加いただいた皆さまからのご質問を受けて、パネリストたちから北欧美術に関しての広い知見を共有していただき、大変有意義なシンポジウムとなりました。
展覧会は、6月9日(日)まで当館で開催。その後、長野・滋賀・静岡へ巡回します。