女体礼賛
東郷青児
東郷が初めて東洋的なモティーフを描いたのは、日中戦争が始まった翌年の二科展(1938年)に出品した《舞》でした。天平風俗を描くよう注文をうけて奈良の仏像を取材したにもかかわらず、当時は「千年と云ふ時代的な悠久さに圧倒され」ベールをまとった女性を描くにとどめたといいます。東郷が世界各地の旅先から持ち帰った骨董品の中には、本作と同じく手が六本ある明代の六臂観音菩薩像をはじめ、チベットの歓喜天像やインドの神像など、アジアの小さな彫刻が含まれています。肉感的な身体によって神聖なものを表わす東洋の造形が、東郷の晩年の境地を暗示しています。
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